今回のもう一つの大きな目的地、ロンシャンに向けて出発です。
パリからロンシャンまで400キロ弱、東京から名古屋を超えて、まだ先の距離です。 大型バスに私たち11人と当日のみ参加のお1人計12人、運転手さんが2人とガイドさんという ユッタリ・ツアーが始まります。途中2回、高速道路わきのモダンできれいなサービスエリアで休憩を取り、それ以外はガイドさんに申し訳ないながら、ほとんど爆睡状態で5時間。 12時すぎにロンシャンにつきました。
礼拝堂は小さな町の小高い丘の上。受付の建物からさらにスロープを上っていくと、写真で見慣れたカニの甲羅といわれている屋根が見えてきます。 でも想像していたよりすっと大きく堂々として、しかもやわらかい感じ。

この建物はコルビジェの晩年、1955年の完成。
それまでの、彼のすっきりした直線的な建築を見慣れた人たちは、この有機的なフォルムに驚いたことでしょう。
ちなみに、コルビジェは上野の国立西洋美術館の打ち合わせのために一度だけ日本に来ています。 その時泊まったのが帝国ホテル。 フランク・ロイド・ライトとは親しい付き合いはなかったそうですが、彼の作品に触れるよい機会だったのですね。それが1955年のことです。

礼拝堂南面の、彼自身が絵を描いた正面入り口は閉まっていました。 ぐるっと西側に回ると、建物の側面は、また、思いがけない迫力でした。建物のこちら側から見上げると、楕円の壁面をもった太い三本の採光塔がそびえたっているのがよく見えます。

屋根にたまった雨水の落下口は巨大な象の鼻の孔のよう。その下に、三角錐と円柱形のオブジェが設置された貯水槽があります。



北側の小さな木のドアから中に入りました。 そこはやはり写真では見ていましたけれど、思っていたよりずっと薄暗く、静かで、胸をうつ空間が広がっていました。
入ったところから正面に、あの小窓とその奥のグリーンや群青色、黄金色の彩色ガラスがみえます。 いろいろなサイズに切り取られた小窓から綺麗な色の光が差し込んでいて、深い壁面の厚みをさらに深く感じさせています。
高い天井と曲線の壁面、ラフな仕上げ材の感覚、しっとりとした空気。
礼拝堂の内側はまるで、洞窟の中のようです。



礼拝用のベンチをなでると手のひらにやさしい、なだらかな曲線で仕上げられていました。
思わず腰かけて、しばらくぼんやりしてしまいました。
東面の大きな祭壇のほかに、三つの小さな祭壇がありました。それぞれ、外で見た採光塔の真下です。 壁面に反射した外光が、ホンワりと祭壇の上に落ちています。


内部は撮影禁止ですが、季節外れのせいか止められることもなく、写真を撮らせていただきました。
もう一度外に出て、広い丘に立ってみると、その見晴らしのよさに驚きます。
寒風が吹きぬけて、グレーの雲が空いっぱいに広がっているのですが、遠くまで見渡せます。 寒い!!




丘の片隅に、小さなピラミッド型の石段が作られています。 第2次世界大戦で爆撃された、以前の教会の石だそうです。 中央から右と左、石の組み方少し違っていて、美しいです。 天気の良い季節の屋外での特別礼拝の時には、きっとこの石段に村の子供たちが座るでしょうね。


ここまで来られた幸運に感謝して、礼拝堂を後にしました。
Supporting Member 塩田英子